
大腸がんの精査のために、CT検査を受ける方のなかには、検査に対して不安を感じる方もいるかもしれません。
また、大腸とは関係ない範囲のCT検査をすることに疑問を感じる方もいるでしょう。
この記事では、CT検査の目的や検査の流れを紹介します。
検査の際に注意が必要なポイントについても解説しますので、検査に対して不安を感じる方はチェックしてみてください。

CT検査とは|短時間で身体の輪切り画像を撮影する検査
CT検査は、X線をさまざまな方向から身体に当てて、輪切り画像を撮影する検査です。
通常、ベッドに横になり、ドーナツ状の機械の内側を移動しながら撮影します。
大腸がんの精査では、息止めをしながら撮影するのが一般的です。
検査にかかる時間は、造影剤(臓器や血管、病変などを観察しやすくするための薬剤)を使用するかどうかによって異なります。
造影剤を使用しない場合は約10〜15分、使用する場合は約15〜30分かかります。
MRI検査に比べて撮影時間が短く、全身をすばやく評価することが可能です。
大腸がんのCT検査では、以下の項目を確認します。
・腹部の状態(腸の形状、手術歴など)
・大腸がんの広がり
・大腸がん周辺や全身のリンパ節の腫れ
・肝臓や肺などの転移
病変の広がりやリンパ節、遠く離れた臓器への転移の有無をもとに、治療方針を決定します。
CT検査を受けられない人の特徴
以下にあてはまる方は、CT検査を受けることができない場合があります。
| 特徴 | 理由 |
| 妊娠している、妊娠のおそれがある | 胎児が放射線に被ばくすると、健康に悪影響をもたらすおそれがある |
| ペースメーカーやICD(植え込み型除細動器)を体内に挿入している | 装置の誤作動を招くリスクがある |
| 胃や大腸などの臓器にバリウムが残っている | 病変やリンパ節などの観察が難しくなる |
近年では、ペースメーカーやICDがあっても、CT検査を受けられる場合が少なくありません。
ただし、挿入している場合は事前に医師に伝えておくことが大切です。
バリウムが胃や大腸などにとどまっていると病変の観察が難しいケースもあり、バリウムが排出されるまで時間をあける場合もあります。
また、上記以外にも、CT検査を受けられないケースも考えられます。
体内に挿入している機器や身につけているものがある場合は、事前に医師へ相談しましょう。
CTで使用されるヨード造影剤とは
大腸のCT検査では、病変をくわしく調べるためにヨード造影剤(病変を観察しやすくするために使用される薬剤)を使用する場合があります。
造影剤は、動脈や静脈などの血管の状態の把握やがんの発見などに用いられています。
がんは大きくなる過程で多くの血流を必要とするため、血流に乗って体内を循環する造影剤がとどまりやすく、病変の発見に役立つためです。
ヨード造影剤の副作用
ヨード造影剤の使用は病変の発見をサポートする一方で、副作用を引き起こす可能性もあります。
主な副作用を以下にまとめました。
| 副作用の重症度 | 代表的な副作用 |
| 軽度 | 熱感(身体が暑くなる感覚)吐き気かゆみじんましん |
| 重度 | 呼吸困難血圧の低下アナフィラキシー |
副作用を引き起こす確率は全体の約3%ですが、熱感やかゆみなどの軽い症状で済む場合がほとんどです。
通常では、検査をしてから数分〜数十分程度でおさまります。
ただし、症状が続いていたり、次第に悪化したりした場合は、重度の副作用につながる前兆の可能性も考えられます。
重度の副作用が生じる確率は、約2,500〜25,000人に1人と言われています。
なかでもアナフィラキシー(薬剤や食べ物などに急激なアレルギー反応を起こしている状態)は、急激な体調悪化を招くため、緊急の治療が必要です。
アナフィラキシーを発症した場合には、以下の症状が見られるケースが多いと言われています。
・じんましん
・腹痛
・息苦しさ
・顔色の悪さ
使用後に普段と異なる明らかな違和感がある場合は、副作用のおそれがあります。
ためらわず、医療機関を受診することが大切です。
ヨード造影剤の使用に注意が必要な人の特徴
ヨード造影剤は、使用によって健康上のリスクを招くおそれがあるため、使用時に注意が必要なケースもあります。
注意が必要な人の特徴を以下にまとめました。
ヨード造影剤の使用に注意が必要な人
一つずつ確認していきましょう。
腎臓の機能が低下している
腎臓の機能が低下している人では、造影剤の使用を控える場合があります。
造影剤は主に尿として体外へ排泄され、腎臓の機能が低下していると、造影剤の排泄の遅れやさらなる機能低下を招くおそれがあるためです。
腎臓の機能が低下すると、老廃物が体内に溜まりやすくなることで、健康状態の悪化につながる可能性があります。
さらに腎機能が高度に低下すると、老廃物を除去するために透析治療が必要となったり、腎臓への負荷になりやすい治療薬を使用できなくなったりするケースもあります。
また、すでに腎臓機能の低下を指摘されている人は、とくに注意が必要です。
造影剤を使用してもよいか調べるために、一般的には、採血検査が実施されます。
採血検査で腎臓の機能が悪いと判断された場合は、腎臓への負担を和らげるために点滴をおこなう場合もあります。
また、脱水した状態では腎臓からの排泄が遅れやすい傾向にあります。
飲水の制限がない場合は、検査の前後で十分な水分をとることが望ましいです。
糖尿病薬を飲んでいる
糖尿病薬を飲んでいる人も、CTの造影剤を使用する場合には注意が必要です。
一部の糖尿病薬はヨード造影剤と反応し、乳酸アシドーシスという危険な状態を招くおそれがあるためです。
また、乳酸アシドーシスは、腎臓機能が低下している場合に生じることが報告されています。
糖尿病薬を使用している人は、事前に医師に伝えておきましょう。
過去にヨード造影剤を使用して副作用があらわれたことがある
過去にヨード造影剤を使用して副作用があらわれた経験がある方は、使用に注意が必要です。
造影剤が体質的に合わず、再び副作用があらわれるケースがあるためです。
過去に副作用があらわれたことがある場合は、異なる成分の造影剤に変更したり、検査前に副作用を予防するための薬剤を使用したりする場合もあります。
ただし、過去にヨード造影剤を使用した際に過敏症を指摘された場合は、使用ができないケースもあります。
過去に副作用があらわれた経験がある人は、副作用の症状や使用した薬剤を前もって調べておくとよいでしょう。
特定の基礎疾患がある
特定の基礎疾患がある人は、ヨード造影剤による副作用のリスクが高まることが報告されています。
主な疾患は以下のとおりです。
・重篤な甲状腺疾患
・気管支ぜんそく
・多発性骨髄腫
・テタニー
上記は副作用のリスクを高める代表的な疾患にすぎません。
持病がある人は、あらかじめ医師や看護師に話しておくことが大切です。
CT検査の流れと気をつけたほうが良いポイント
CT検査の一般的な流れは次のとおりです。
問診
静脈ルート確保*
検査室入室、金属類や貴重品類のチェック
造影剤使用歴と副作用歴の確認*
撮影①
造影剤の投与*
撮影②
経過観察、注射針の抜去*
*マークがついた項目は、造影剤を使用する場合におこなわれます。
なお、通常、CT撮影そのものが原因で急な副作用が生じることはほとんどないとされています。
造影剤を使わない場合は、経過観察の時間を設けていないケースが一般的です。
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1問診
CT検査では、通常、検査前に問診をとります。
問診で確認する主な項目を以下にまとめました。
問診で確認することリスト
- 造影剤の使用で副作用があらわれたことがないか
- 気管支ぜんそくや重篤な甲状腺疾患などの基礎疾患がないか
- 糖尿病を患っていないか(治療している場合は使用している糖尿病薬の名前も確認)
- 腎不全を指摘されていないか
- 妊娠や妊娠の可能性がないか
- 体重
安全に検査を受けるためにも、問診で確認する内容を事前に調べておくことをおすすめします。
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2静脈注射
造影剤を使用する際は、検査前に造影剤を注入するための静脈注射をおこないます。
大腸がんのCT検査で使用する注射針は、通常、留置針と呼ばれる針が用いられます。
血管内に残る部分は金属ではなくプラスチックであるため、過度な心配をする必要はありません。
ただし、注射した部分が曲がると造影剤の注入に悪影響をもたらす可能性も考えられます。
できる限り注射した部分をまっすぐに伸ばすように心がけましょう。
step
3検査室入室、金属類や貴重品類のチェック
検査室に案内されると、金属類や貴重品がないか確認します。
金属類を身につけていると、撮影部位の観察が難しくなる場合があるためです。
以下のような金属がある場合は、取り外しが可能であれば事前に準備しておくとよいでしょう。
検査時に外す必要があるモノ
- アクセサリー類(ピアス、ネックレス、指輪など)
- ベルト・ズボンのファスナー(ズボンは撮影範囲外まで下げればOK)
- 下着についている金属類(ホックのついたブラジャー肩ひもの長さを調節する金具がついたキャミソールなど)
- 顔の周りの金属類(ヘアピン、入れ歯、眼鏡、補聴器)
- 身体に貼っているもの(カイロ、エレキバン、湿布)
- 貴重品類(スマホ、お財布、カギ類など)
撮影の範囲によっては取り外しが不要なケースもあるため、どうしたらよいか担当者に確認することをおすすめします。
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4造影剤使用歴と副作用歴の確認
大腸がんのCT検査では、通常、以下のような説明をおこないます。
CT検査の注意事項
- アナウンスに合わせて息止めをする
- 検査中は指示がない限り身体を動かさない
- 造影剤投与中に針の先に痛みがある場合は、すぐに伝える
- 造影剤投与中に気分が悪くなったら伝える
撮影時に息止めが不十分だと画像がボケてしまい病変を十分に観察できない可能性があるため、しっかりと息を止めることが大切です。
不安な場合は、息止めの時間がどのくらいか聞いておくのも一つの手です。
また、撮影の内容によっては、連続して複数回撮影する場合もあります。
検査が終わるまでは身体を動かさないように心がけましょう。
造影剤を使用して注射した部分が痛くなったり、気分が悪くなったりした場合は、ためらわず、担当者に伝えることが大切です。
場合によっては、投与を止めたり、処置が必要となったりするケースも考えられます。
過去に副作用があらわれたことがある方は検査前に再度伝えておくとよいでしょう。
step
5撮影①
前半の撮影では、通常、息止めをした状態で正面と側面のレントゲン写真を撮影します。
レントゲン撮影の目的は以下のとおりです。
・本番の輪切り画像を撮影する範囲を決定する
・過剰に放射線による被ばくを抑える
衣類の金属類や貴重品がついていて、検査に支障をきたす場合は、この段階で取り外します。
金属類や貴重品がついていると再度撮影が必要なケースもあるため、事前に外しておくことが望ましいです。
step
6造影剤の投与
造影剤の投与では、専用の機械を用いて注射針から一定の速度で体内に注入します。
通常の1回の撮影であれば約1分かけて投与しますが、手術前やCTコロノグラフィの場合では、動脈や静脈の情報を得るために、20-30秒ほどの短時間で急速に造影剤を投与する場合もあります。
造影剤の使用では、通常では熱感という身体が温かくなる症状がみられますが、急速に注入するほど急激な変化を実感しやすいです。
急激な変化があらわれても驚かないように、注意しましょう。
step
7撮影②
二回目の撮影では、身体の輪切り画像を撮影します。
造影剤が体内を循環している状態で撮影するため、投与を開始してから約1分半ほど経過してから撮影するケースが多いです。
また、撮影内容によっては、造影剤の使用後から時間を空けて複数回撮影することもあります。
息止めができておらず画像がブレていた場合には、再度撮影が必要なケースもあります。
意識して息止めに取り組みましょう。
step
8経過観察、注射針の抜去
撮影が終わったあとは、体調に変化がないか確認するため、検査室の周辺で体調に異常がないか観察します。
造影剤による副作用が検査終了後から約5分以内にあらわれやすいためです。
待機中に体調に変わりがなければ、注射針を抜き、CT検査は終了です。
水分の摂取に制限がなければ、体外へ早い段階で造影剤を排出するために意識的に水分をとりましょう。
また、一部には帰宅してから体調不良を引き起こす人もいます。
造影剤の副作用には時間が経ってから発症する場合もあるため、いつもと異なる症状がみられた場合は、できるだけ早めに病院を受診しましょう。
CT検査に関するQ&A
ここでは、CT検査に関して寄せられるよくある質問について回答します。
CT検査のよくあるQ&A
一つずつ見ていきましょう。
CT検査の費用はどのくらいかかりますか?
CT検査にかかる費用を以下にまとめました。
| 検査内容 | 検査費用 | 3割負担額 |
| CT 単純(造影剤なし) | 約20000-30000円 | 約6000-9000円 |
| CT 造影(造影剤あり) | 約30000-43000円 | 約9000-13000円 |
なお、費用は造影剤の種類によって異なります。
医療機関によっては、ジェネリック造影剤を取り扱っている場合もあり、費用が抑えられている場合もあります。
月に何回もCTの撮影をしても大丈夫ですか?
1か月に数回程度のCT撮影であれば、一般的には、健康に大きな悪影響が出ることは少ないとされています。
医師によって患者に必要な医療行為であると判断された場合に限り、CT検査が実施されます。
放射線被ばくをするデメリットと、検査で得られるメリットを検討したうえで、検査がおこなわれます。
被ばくについて不安に感じる方は、あらかじめ医師や放射線技師に聞いておくのもよいでしょう。
検査の前は絶食が必要ですか?
CT検査では、絶食は基本的には必要ありません。
ただしCTコロノグラフィ(大腸内部の観察に特化したCT検査)をおこなう場合は、前日の検査食や食事制限が必要な場合があります。
必要な準備がないか、前もって問い合わせておくことが望ましいです。
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CT検査は怖い検査じゃない!
CT検査は、大腸がんの進行度やリンパ節、ほかの臓器への転移がないか観察し、治療方針の決定に役立つ重要な検査です。
造影剤の使用による副作用や被ばくなどのリスクをともないますが、事前に副作用について知っておき、適切な対処をすることでより安全に検査を受けることができます。
どうしても検査に対して不安に感じる方は、納得できるまで医師と話し合うことも検討してみるとよいでしょう。
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