大腸がん

大腸がんになりやすい人の特徴3選。大腸がんにならないために今できる予防法を紹介。

大腸がんになりやすい人ってどんな人?

大腸がんにならないために今できることって何?


がんになるのって恐いですよね……


令和4年の統計によると、死因の第1位がん(悪性新生物)で、全体の24.6%を占めています。(厚生労働省 人口動態統計月報年計の概況より引用)


中でも大腸がんの死亡者数は男性で2位、女性で1位であり、年々患者数が増えている恐ろしいがんです。


この記事では、大腸がんになりたくない人に是非とも知ってほしい知識を紹介します。
明日からでもできる予防法を知って、大腸がんで悩む人が一人でも減ってほしい……そんな思いで書きました。


この記事を読めば、大腸がんの予防法がバッチリ学べますよ!





日本の大腸がん事情


2019年の統計によると、全てがんにかかっている人のうち、大腸がんを患っている人の数は男女合わせて1位です。


また2022年の統計では、がん死亡者数のうち大腸がんが原因だった人は男女合わせて2位となっています。


さらに大腸がんの患者数は増加傾向にあります。


下の図1を見てください。


胃がんや肝臓がんにかかっている人の数は年々減少傾向なのに対して、大腸がんが横ばいあるいは増加傾向にあることがわかると思います。


図1 部位別年齢調整罹患率*1)の推移(1985年~2015年)
*1) 年齢構成の違いを考慮した罹患率(がんを患っている人の割合)

引用元:がんの統計 2022


社会の年齢構成を考慮した年齢調整罹患率が上がっていることは、大腸がんをわずらう人の割合が増えていることを意味します


大腸がんになりやすい人の特徴


次の3つの項目に該当する人は大腸がんになるリスクが高いことがわかっています。


大腸がんになるリスクが高い人の特徴


50歳以上である


大腸がんは全ての年齢で発症しやすいがんではありません。


下の図2は大腸がんの年代別のかかりやすさを示すグラフですが、40歳くらいから増えはじめ50歳を境に大きく増えることが読み取れます。


図2 2019年 大腸がん 罹患率

引用元:大腸がん 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)


実際のところ大腸がんの原因の1つに、50歳以上であることが挙げられています。(大腸ポリープ診療ガイドライン2020より引用)



肥満体型(男性)


肥満体型は大腸がんのリスクを高めることがわかっています。


メカニズムとしては次のような流れで説明することができます。


肥満が大腸がんのリスクを高めるメカニズム

  1. 脂肪が増えて肥満になると、インスリンが効きにくくなる
  2. インスリンの量が増える
  3. 血中のインスリン濃度が高くなる(高インスリン血症)
  4. IGF-1という細胞の増殖を促すホルモンが活発化→大腸がんのリスクが高まる


日本の研究結果ではBMIが27以上の男性は25以下の人に比べてリスクが高いことがわかっています。(がん対策研究所 予防関連プロジェクトより引用)


自分のBMI値がわからない人は下のツールで確認してみてくださいね。



BMIが27を越えている人は生活習慣を見直しましょう!


遺伝(大腸がんの家系)


遺伝もがんのリスクを高める要因の1つです。


大腸がんの場合、次の2つの病気がリスクを高めることがわかっています。


大腸がんのリスクを高める遺伝


リンチ症候群


若年齢や、同時性・異時性で発症する遺伝性大腸がんの1つ。


リンチ症候群の遺伝子を持つ場合は、一生のうちに80%の人が大腸がんを発症すると言われています。


リンチ症候群の診断基準に、アムステルダム基準Ⅱ改訂ベセスダガイドラインの2つがあります。


アムステルダム基準Ⅱ(1999)

少なくとも3人の血縁者がリンチ症候群関連腫瘍(大腸がん、子宮内膜がん、腎盂・尿管がん、小腸がん)に罹患しており、以下のすべてを満たしている。

  • 1人の罹患者はその他の2人に対して第1度近親者*である。
  • 少なくとも連続する2世代で罹患している。
  • 少なくとも1人のがんは50歳未満で診断されている。
  • 腫瘍は病理学的にがんであることが確認されている。
  • FAP(家族性大腸ポリポーシス)が除外されている。


改訂ベセスダガイドライン(2004)

以下の項目のいずれかを満たす大腸がん患者には、腫瘍のMSI検査が推奨される。

  • 50歳未満で診断された大腸がん。
  • 年齢に関わりなく、同時性あるいは異時性大腸がんあるいはそのほかのリンチ症候群関連腫瘍***がある。
  • 60歳未満で診断されたMSI-Hの組織学的所見****を有する大腸がん。
  • 第1度近親者が1人以上リンチ症候群関連腫瘍に罹患しており、そのうち一つは50歳未満で診断された大腸がん。
  • 年齢に関わりなく、第1度あるいは第2度**近親者の2人以上がリンチ症候群関連腫瘍と診断されている患者の大腸がん。


注釈の解説

*:自分の遺伝子の1/2を持っている血縁者(両親と子ども、兄弟姉妹が該当)
**:自分の遺伝子の1/4を持っている血縁者(祖父母、孫が該当)
*** :大腸がん、子宮内膜がん、胃がん、卵巣がん、膵がん、胆道がん、小腸がん、腎盂・尿管がん、脳腫瘍(通常はターコット症候群にみられるglioblastoma)、ムア・トレ症候群の皮脂腺腫や角化棘細胞腫
****:腫瘍内リンパ球浸潤、クローン様リンパ球反応、粘液がん・印環細胞癌様分化、髄様増殖


家族に当てはまる人がいる場合は、一度かかりつけの病院(かかりつけがない場合は遺伝相談外来のある病院)で相談することをオススメします


家族性大腸ポリポーシス(FAP)


大腸内に100個以上のポリープができる遺伝性の病気です。


ポリープをそのままにしておくと、40歳で50%、60代でほぼ100%大腸がんになることがわかっています。


そのため、ポリープが大腸がんになる確率が低い20代までに大腸を切除する手術が奨められています。


大腸を切除した場合でも、胃や十二指腸のがんになる可能性が高いので、定期的な胃の内視鏡検査がとても大切です


大腸がんの予防のために見直すべき生活習慣


大腸がんにならないために今から取り組めることは次の4つです。



食生活の見直し


大腸がんの予防として、食生活を見直すことはとても大切です。


中でも次の2つを意識した食生活は、大腸がんの予防に良いと言われています。


大腸がんの予防のためにできること


赤身肉・加工肉を食べ過ぎない


牛や豚、羊などの赤身肉や加工肉の食べ過ぎは、大腸がんのリスクを高めることがわかっています。


男性の場合、毎日100g以上の肉類を食べることで結腸がんのリスクが高まり、女性では毎日80g以上の赤身肉で結腸がんのリスクが高まることがわかっています。(がん対策研究所 予防関連プロジェクトより引用)


日本は海外と比べると肉類の摂取は少ないですが、食べ過ぎには気をつけましょう!


食物繊維を多めに摂る


食物繊維が極端に少ない人は、食物繊維を多く摂っている人に比べて大腸がんの発生率が低いことがわかっています。


ただ、普通の日本人の食生活であれば最低限の食物繊維を摂ることができるので、直接的に予防につながる訳ではありません。


ただ肥満や非インスリン性糖尿病(2型糖尿病)を予防する目的では食物繊維の摂取はとても重要です!


野菜果物を意識的に食事に取り入れ、バランスの良い食生活を目指すことが大切です。


運動習慣を身につける


筋肉労働激しいスポーツをしている人歩いたり立ったりしている時間が1日3時間以上ある人、結腸がんになるリスクが下がることがわかっています。


この研究結果は男性に限ったもので、女性では明らかながんのリスクの低下は見られませんでした。


ですが食生活と同様に運動習慣が身につくことで、肥満の抑制や高インスリン血症の予防につながり、大腸がんのリスク低下に結びつきます。


運動の目安は次のとおりです。(厚生労働省 健康づくりのための身体活動基準2013より引用)


がん予防として推奨されている運動量

  • 18歳から64歳

歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分

また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分

  • 65歳以上

強度を問わず、身体運動を毎日40分


推奨時間の運動を目指して、まずは毎日10分からはじめましょう!


禁煙する


喫煙は大腸がんの発症リスクを高めます。


男性では喫煙本数喫煙年数が多いほど、大腸がんにかかるリスクは上がることがわかっています。


また女性では1日あたりの喫煙本数が20本以上で現在も喫煙している人や、累積喫煙指数が40を越える人で大腸がんのリスクが高まると言われています。(がん対策研究所予防 関連プロジェクトより引用)


累積喫煙指数は1日の喫煙本数×喫煙年数の値で求められます


タバコは大腸がんに限らず、あらゆるがんの原因になるので禁煙は重要です。


ほどほどの飲酒を心がける


過度の飲酒は大腸がんのリスクを高めます。


男女ともに1日のアルコール摂取量が15g増えるごとに、大腸がんのリスクが10%上昇することが予測されています。


また大腸がんをわずらっている男性の1/4は、23gを越えるアルコールの摂取に起因しているとも言われています。(がん対策研究所 予防関連プロジェクトより引用)


お酒を全く飲まないことが理想ですが、アルコール摂取量が一日あたり23gを越えないようにするだけでも、十分に予防効果があります。


自分が普段飲んでいるお酒のアルコール量を、一度チェックしてみてくださいね。


表1 お酒ごとのアルコール量の目安(厚生労働省  e-ヘルスネットより引用)

お酒

アルコール量/g

ビール 大瓶 25
ビール  レギュラー缶 (350ml) 14
日本酒 (15%) 1合 (180ml) 22
チューハイ (7%)  レギュラー缶 20
ワイン (12%)  グラス (120ml) 12
ウィスキー (40%)  シングル水割り (原酒30ml) 10
梅酒(13%)  1合 (180ml) 19


大腸がんの予防のために検診を受けることの大切さ


大腸がんを予防するために、生活習慣の見直しの大切さをここまで解説してきました。


生活習慣の見直しで、大腸がんになるリスクを下げることはできます。


ただ完璧な生活習慣でも、大腸がんになるリスクをゼロにすることはできません。


だからこそ、がん検診受診がとても重要なんです。


大腸がん検診とは

  • 便の中に血液が混ざっていないかを見る検査(=便潜血検査)
  • 2日分の便を提出する2日法が行われることが多い
  • 40歳以上で、毎年1回の受診が推奨されている


簡単かつ安く受けられるところが大腸がん検診のメリットです!


検診が大切なのは想像できるけど、まだ40歳なのに検査する必要はあるの?

便潜血検査だけ受けておけば大丈夫?

といった疑問を持っている人は少なくないでしょう。


ここからは、これらの疑問について解説していきます。


40歳以上で毎年大腸がん検診を受けることが推奨されている理由


がんは細胞分裂を繰り返し、分裂のたびに数を倍に増やしていきます。


がんが発生してから1cmほどの大きさになるまで10~15年かかるのに対して、1cmが2cmになるまでには2年もかからないと言われています。


がんは大きくなってきてからの変化が急激なので、毎年検査を受けることが大切です。


早い段階で治療ができれば手術だけで済みますが、進行した場合には抗がん剤や放射線での治療が必要になることもあります


図2で示したように、大腸がんにかかるリスクは40歳以降から高まってきます。


このため毎年大腸がん検診を受けることが好ましいのです。


大腸がんの検査は、便潜血検査だけで大丈夫なのか?


結論から言うと、便潜血検査だけでは大腸がんを見逃してしまう場合があります。


大腸がんになる前のポリープの状態では出血がないからです。


便潜血検査の目的は、死亡率の減少


大腸がんが進行する前に発見することが大きな目的なのです。


大腸がんの予防という観点では、大腸内視鏡検査のほうが優れています



大腸内視鏡検査のメリットは、医師が直接カメラを扱って大腸を検査することです。


大腸がんになりかねないポリープを見つけることも可能ですし、小さなポリープであれば検査中に切除することも可能です。


だから大腸がんを未然に防ぎたい人は便潜血検査よりも、大腸内視鏡検査を受けたほうが良いです


もしも今の時点でおなかの不調や症状が出ている場合は、早めに大腸の内視鏡検査を受けることを強くオススメします


大腸がんの症状については、下の記事で解説しているので確認してみてくださいね。


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大腸がんの初期症状とは?7つの検査方法とともに解説

  • この記事を書いた人

さとし

現役の放射線技師。がん特化病院に勤務するかたわら、医療系WEBライターとして記事を執筆中。 三度の飯より読書が好き。