治療後の経過観察中は何をするんだろう……
日常生活で気をつけたほうがいいことはあるの?
経過観察中は、治療期間中のように頻繁に通院したり検査の頻度も減るので不安に感じる人もいるのではないでしょうか?
この記事では、大腸がん治療後の経過観察に関して解説します。
医師や看護師には聞きにくい悩みについても解説します!
この記事でわかること
経過観察期間中の通院について
大腸がんの手術が終わって何年も経つのにまだ通院が必要なの?
次の診察までに期間が空いてるけど大丈夫?
治療が無事に終わったからこそ、心配に感じることもたくさんあるはず……
そこで経過観察期間の疑問について解説していきます。
大腸がんの経過観察における疑問
大腸がんの経過観察期間と通院頻度
大腸がんの経過観察期間は5年で一区切りとされています。
なぜなら、治癒後5年を過ぎると大腸がんの再発リスクは大きく下がるためです。
下の表を見てみてください。
大腸がんの治癒後5年後の再発率は全体のうちの0.6%であることがわかります。
転移のリスクが高いステージⅢでも1.1%。再発の可能性は5年以降では滅多にありません
大腸がんは5年以降の再発リスクが低いので、経過観察の期間は5年に設定されていることが多いです。
少なくとも5年間は通院して経過観察をすると心得ておきましょう。
大腸がんの経過観察中の検査
術後の経過観察中では主に次のような検査を行います。
大腸がんの経過観察中に行う検査
経過観察中の検査スケジュールは次のとおりです。(大腸がん治療ガイドライン 医師用2022年版より引用)
手術1年後~手術3年後まで行う検査
- 3ヶ月ごとに行う検査
血液検査(腫瘍マーカー)
- 6ヶ月ごとに行う検査
CT検査
直腸診 ※直腸がんの場合
- 術後12ヶ月後に行う検査
大腸内視鏡検査(結腸がんの場合は24ヶ月後、術後3年後の2回)
- 3ヶ月ごとに行う検査
手術3年後~手術5年後まで行う検査
ではそれぞれの具体的な検査内容について解説していきます!
血液検査(腫瘍マーカー)
手術後の採血検査では、通常の採血データとともに腫瘍マーカーのデータを見ています。
大腸がんの腫瘍マーカーには「CEA」という項目が使われています。
大腸がんの腫瘍マーカー「CEA」とは
- がんによってつくり出される特徴的な物質
- 血液から数値を測定する
- 数値の上昇で症状の悪化や経過観察中の再発をチェック
- がん以外にも数値が上昇する要素がある(喫煙・加齢など)
3ヶ月ごとのCEAの測定は早期の再発発見につながり、生存率を高めることがわかっています
注意が必要なのは、喫煙や加齢、肝硬変や肺結核などの病気によってCEAの値が上昇すること。
数値が上がったからといって大腸がんの再発とは言えないのです。
CEAの値の上下に一喜一憂しないことが大切です!
CT検査
CT検査は治療後に半年に1回、コンスタントに行われます。
CT検査の目的は、切除した周辺の再発の有無やリンパ節、肝臓や肺への転移を見るためです。
基本的には造影剤というお薬を血管から投与して撮影を行います。
採血で腎臓の機能が落ちていると分かれば、造影剤を使わずに撮影することもあります
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大腸がんでCT検査をする意味とは?検査までの流れと気を付けるべきポイント
直腸診
直腸がんの経過観察中は、直腸診を行うことがあります。
直腸診の目的は、手術で腸をつないだ箇所の再発である、吻合部再発の可能性が高いためです。
大腸内視鏡検査や注腸検査で吻合部の再発を検査する場合も多いです
大腸内視鏡検査
内視鏡検査はがんの部位によって行うタイミングが異なります。
結腸がんの場合は1,3年後のタイミングですが、直腸では3年後までの毎年、内視鏡検査を行います。
直腸がんで内視鏡検査を毎年行うのは、吻合部再発のリスクが高いためです
内視鏡検査や注腸検査の詳細に関しては下の記事で解説しています。
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大腸がんの初期症状とは?7つの検査方法とともに解説
経過観察後の検査
手術後5年間の定期検査を過ぎた後は、定期的な検査は行われません。
ただステージにかかわらず大腸がんの病歴がある場合、再度大腸がんを発症するリスクが上がります。
そのため定期検診を受けたほうが良いです。
再発は怖いですが、大腸内視鏡検査の検診を受けていれば安心です!
経過観察中の日常生活での注意点
経過観察中になると、治療中とは異なり行動の制約も減ります。
とはいえすぐに、治療前の生活に戻すのは大変ですし、支障がある部分もあるはず。
ここからは、がんの経過観察中の日常生活の過ごしかたについて解説します。
経過観察中の注意点
便失禁とストーマ
手術の影響で、排泄時の残便感やトイレが近くなったり、自然に便が漏れることがあります。
次第に症状は改善されていくものですが、不意に起きてしまうので、旅行中や大切な用事があるときは替えの下着やオムツがあると安心です。
ストーマがある場合は、清潔に保つために定期的に装具を取り替える必要があります。
装具をはずした状態でも入浴は可能ですが、便が排泄される場合もあるので排泄のタイミングを把握してからのほうが安心です。
温泉に行くときは、ストーマ装具を空にしておけばバッチリです
また湯温が高いと、熱い感覚がないためにストーマの粘膜がやけどしてしまう可能性もあるので気をつけましょう!
運動・食事
がんの治療中は運動の機会がグッと減るため、体力不足に陥りがちです。
経過観察中になったら少しずつ運動する習慣をつけましょう。
無理にならない程度の運動をすれば体力がつきますし、気分転換にもなります
食事に関しては、腸の動きが弱まっていることがある術後1-3ヶ月ほどはできる限り消化の良いモノを選んだほうがよいです。
食物繊維が多いモノや、消化の悪いモノ、おなかが張る炭酸は避けた方が無難です!
薬物療法と性生活・妊娠
大腸がんの治療を行った場合、性生活には注意が必要です。
手術による影響で神経が傷ついた場合、勃起・射精障害を来す場合があるからです。
神経に損傷がなく問題がない場合、性生活の再開までには数ヶ月ほどかかると言われていますが、術後の治りには個人差があるので主治医と相談するのが良いでしょう。
また薬物療法を受けた場合、治療が終わってから一定の期間でも薬が精液や膣分泌液に排泄されることがあります。
薬による影響をパートナーが受けないようにするために、コンドームによる避妊が好ましいです。
また薬物療法によって白血球が減少して感染しやすくなる場合もあります。
免疫が低下しているときは感染症になりやすくとても危険なので、性交渉は避けましょう。