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【現役医療職が解説】医療従事者の給料が低いたった1つの理由。

ここ一年でとても物価が高騰しましたよね。スーパーの卵は1.5倍くらい値上がりして300円ほどにもなりましたし、電気やガスの料金プランも改定が行われ、家計への負担もかなり大きなものになりました。

このような物価の上昇に伴い、ベースアップを実施した企業があったことは記憶に新しいでしょう。日本経済新聞社の調査によると、2023年の賃上げ率の平均は通常昇給とベースアップを合わせて3.89%でした。(参考文献)

ここで思い出してみてください。あなたの今年の昇給額はどのくらいでしたか?

もし医療従事者であるなら、ほとんどの職場においてこの平均値を上回る賃上げ率は期待できないでしょう。比較的安定している公的機関の医療従事者だとしても、せいぜい年3%程度の昇給額であると言われています。

思えば、コロナ流行期でも、一度慰労金が支払われた程度で、それ以降は何も手当はありませんでしたよね。5類に移行した今でも、医療機関では以前と同じような業務が強いられていますし、流行期になるたびに職場の人員が手薄になり、消耗しがちですよね。

しかしながら、医療従事者の給料はここまでに安く据え置かれつつも、賃金が上がりません。

今回は、どうして医療従事者の給料が安く、昇給しないのか?

その、たった1つの理由について紹介していきます。

賃金と職業の価値の関係性

職業の種類は星の数ほど様々にありますよね。職業をカテゴリー分けした場合、医療という職業はエッセンシャルワーカーと言われる分野に分類することができます。エッセンシャルワーカーとは必要不可欠な労働者の意で、この職業がなければ世の中がまわらない労働の1つです。

「世のため人のため」というような分野であり、自分の職業を誇らしく感じている方もいるのではないでしょうか?

実際に私も医療従事者として病院で勤めていますが、仕事をしているという認識よりも、困っている人(患者)を助けるという印象が強く、どちらかというと職業より人助けというイメージがあります。身体を動かさざるを得ないため、デスクワークのような仕事仕事した職業ではないよな、と感じています。

医療従事者のほかにもエッセンシャルワーカーはたくさんあって、その例としては、教師や保育士、介護士、公務員などがあります。

職業の幅は様々ですよね。ですが、このすべてに共通することがあります。

それは、どの職業も給料が安いということ。

エッセンシャルワーカーに共通しているのは、給料が安いということなのです。

ではなぜ、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの給料は安いのでしょうか?

医療従事者の給料が安い理由

エッセンシャルワーカーは必要不可欠な職業という意味ですが、例としてあげたのは先のような一部分の職業で、大半の職業はエッセンシャルワーカーではありません。

そうなると、大半の職業はすべて必要不可欠ではない職業、つまり消えてしまっても問題がない職業ということです。

世の中にある職業のうち、高給取りの職業としては弁護士や、金融系・メガバンクの職員が思い浮かぶと思います。このような職業はエッセンシャルワーカーではありません。

そしてこれらの職業をカテゴリーに分けて分類すると、「ブルシット・ジョブ」という言葉で表現することができると言います。

ブルシット・ジョブとは何か?それは次のような言葉で言い表すことができます。

ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。

「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論ー」p.27-28

私たち、医療従事者の仕事において意味のない行動というのはほとんどないはずですよね。一挙手一投足すべてが患者のための医療という形に還元される。だから、本当にこのような仕事があることに対してピンと来ない人も多いはず。加えて、うらやましく思ったのでないでしょうか。「完全に意味がなくて、必要性がない仕事なんてどれほど楽だろう…」というように。

ですが、これは誤りなんです。なぜなら、何にも意味がなく、いてもいなくても問題な仕事であれば、勤務中の自分の存在価値を保つことができないから。

一日の勤務時間が7時間あるとして、その勤務のあいだ存在価値を否定される…。ブルシット・ジョブとはこういうことを意味するんです。

「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」で知られるドストエフスキーは、シベリアの収容所に入れられたとき、労働について次のような気づきを得たと言う。

最悪の拷問とはだれの目にも意味のない作業をいつはてるともなく強制することである。かれのみたところでは、シベリア送りの囚人が名目上は「重労働」の判断をくだされたとしても、その作業は実際には、そこまで厳しいものではなかった。大半の農民の仕事の方がはるかに厳しいというのである。けれども農民は、少なくともある程度までは、主体的に働いている。収容所での労働の「重労働」たるゆえんは、労働する者たちがそこから得るものがなにもないという事実にあった。

「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論ー」p.34-35

これを読んで思い出したのは、山崎製パンの夜勤バイトの話。ベルトコンベアに乗って流れてくるパンの向きを変えたり、検品のチェックを延々と続ける作業を休憩を取りつつ、夜18時から朝6時まで働き続けるという。

この職業はブルシット・ジョブではないけれど、延々と同じ作業をすることの苦痛さは計り知れない。実際に、過酷なバイトとして有名なところから察するにそうなのでしょう。

仮に、決められたイラストを砂浜の波打ち際に木の枝で書き続けるバイトがあったとする。当然、書いているそばからイラストは波に洗われて消えていく。作業の意味のなさと成果物が無に帰すことの虚無感で、きっと私たちはその作業以上の重労働さを感じるのではないでしょうか?

だからこのバイトの給料が非常に良かったとしても、二回と同じバイトするのは苦痛であるに違いない。

そうすればこのバイトには人が集まらなくなる。そうすれば、運営側は給料を引き上げざるを得なくなる。そうこうしているうちに、この苦痛さと給料を天秤に掛けて、給料のために働く人が出てくる…

このようにして、意味のない仕事こそ高給取りでなければいけなくなるのです。よって、エッセンシャルワーカーは相対的に給料が安くなるという構図が出来上がります。

本書「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論ー」では、エッセンシャルワーカーの給料について次のように書かれています。

第一に、仕事をすることで得られる最も重要なものは
⑴生活のためのお金
⑵世界に積極的な貢献をする機会
であるということ。
第二に、この二つには倒錯した関係性があるということ。
すなわち、その労働が他者の助けとなり他者に便益を提供するものであればあるほど、そしてつくりだされる社会的価値が高ければ高いほど、おそらくそれに与えられる報酬はより少なくなるということ、である。

「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論ー」p.271

非常にショッキングな事実ですよね。てっきり私は医療従事者の人の役に立つという報酬は、給料に上乗せされた付加価値だと考えていました。でも本当のところ、その実態はトレードオフの関係性にあるという…

次の章では、この事実を受けて私たちはどう向き合っていくべきか考えます。

医療職と私たちはどう向き合うべきなのか?

人の役に立つことと給料は反比例の関係性にある。

この事実をうけて私たちは医療従事者という職業としてどう向き合うべきなのでしょうか?

私たちにとって問題なのは、生活に支障が生まれかねないような経済状況にあるということ。それならば、選択は二つに一つです。

一つは、未練を裁ち切り医療職から離れるという選択。もう一つは副業をして収入を得るという方法です。

理想を言えば、経済的自由がある状況にありながら医療職で働き続けている状況というのが最強です。

収入の問題を度外視した状況で医療従事者として勤めれば、先に述べた項目における⑵の「世間的な貢献」だけを満たせば良い状況になりますから。

ただ医療従事者という職業が、やや自己犠牲的な立場を強いられるということは変わることがないと思います。だから、あなたがまだ若いなら思い切って業種を変えるなり、副業取り組んだほうがいい。

反対に、あなたがもう定年までそう遠くないならば、働き続けた方が吉でしょう。医療従事者という職業は年功序列の傾向が強いですし、ある程度年齢を取れば将来の出費と貯蓄の実情が見えてきます。そうなれば、いたずらに将来に対して悲観することもなくなりますし、世間的な貢献という意味の比重が重くなってくる。

英国の統計によると、看護師や医療専門職の幸福度はその他の職種に比べて高いという結果が出ています。

医療職は国家資格なので、有資格者だけがアプローチできるクローズドな職種です。そのため、望めば働く機会が得られるありがたい業界とも言えます。

結果的に医療職に戻ってくる選択肢を残しつつ、もっといろいろな仕事や副業に挑戦する余裕が私たちにはあります。

だからどんどん興味のあることにはチャレンジしたらいいのです。

まとめ

自分の人生を見つめて、医療職との向き合い方を考えよう!

今回は医療従事者の給料が安い理由について解説しました。

結果的にエッセンシャルワーカーは、公益性という報酬を得ているため、薄給になってしまうのです。

さしあたり私たちの問題は経済的都合でしょう。医療従事者が医療職としてよく生きるならば、この問題を解決しなければなりませんし、やや自己犠牲を求められる環境に耐えられないのなら、別の道を探るよりほかありません。

この本の内容で決定的だったのは、医療従事者の薄給であることが世界的に共通することであり、解決することが難しい状況であるということ。ショッキングで受け入れがたい事実ですが、このことを知らずにただ嘆くばかりの職業人生を生きていくよりはずっと前向きです。

あなたはどう生きていきたいか。それでもエッセンシャルワーカーであるこの職業を生きていきたいですか?

一度よく考えてみてくださいね。

そしたらまた。

*今回紹介した「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論ー」は職業についての学びがたくさん得られ、非常に深く考えさせられました。ブログで書ききれないほどの金言がたくさんありました。
医療従事者にぜひオススメの一冊です。

非常にボリューミーな内容であることに加え、本で買うと4000円ほどしますが、audible版では、無料で読めます
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まず、役に立つから雇用されたかのように扱われる。そして、実際そうであるように調子を合わせてふるまっている。ところがそれと同時に、自分が雇われているのは役に立つからではないということも痛烈に自覚している。このようなあり方が、ひとに甚大なる悪影響を及ぼしてしまうのである。それは、個人の自尊心を損ねているのみならず、わたしはわたしであるという根源的感覚に対する直接攻撃なのだから。

「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論ー」p.121

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  • この記事を書いた人

さとし

病院に勤務するアラサー医療従事者。 趣味は旅行と読書(年間150冊)。 新社会人から30代までの一人暮らしをより豊かに、人生をイージーモードに変えるアイデアを紹介します。 おもに本の紹介や仕事や家事の時間術、おすすめのお金の使い方など。